故杉山朗子先生へ向けて

JLT4期生 吉田安有実

杉山先生といえば思い浮かぶのは、颯爽としたショートカットに素敵な笑顔で、明朗にお話をされる元気なお姿です。国際教養大学の教室にて、4期生が集まって先生を中心に囲みながら様々な授業を受けていたのを今でもよく覚えています。教室で私たち一人一人の投げかける質問に対し、明晰な口調にユーモアを交えながら答えてくださったお姿。ご自身の研究室にて、外の窓が暗くなるまで私たちの課題や疑問に付き合ってくださったお姿。授業見学に伺った際、留学生たちに生き生きと日本語を教えていらっしゃったお姿。時にはカフェテリアにて、お昼ご飯を一緒にさせていただきながら、気さくな雑談に入れてくださったこともありました。会話の中で見せてくださった笑顔、指導してくださった際の凛とした表情、そのどれもを鮮やかに思い出すことができます。日本語教育について何の予備知識もなく入学した私は、今から思えば赤面してしまうようなつたない指導法や疑問を先生の前に惜しげもなく晒していたものですが、その一つ一つを先生は実に根気よく指摘してくださり、細やかに指導してくださいました。

ご訃報を耳にしてようやく闘病されていたことを知ったのですが、それでも病床にある先生のお姿は想像し難く、頭をよぎるのは先生のまっすぐ伸びた背筋に輝くばかりの笑顔です。もうお目にかかれないという事実がいまだに信じられず、幾度も先生との時間を思い返しています。心のどこかで、杉山先生はずっと国際教養大学にいらっしゃって教鞭をとっておられるものと安心していたために、卒業後いつでもお会いできる機会があると考えていた安易な自分が悔やんでも悔やみきれません。最期まで先生が国際教養大学に戻って教壇に立つことを望んでいたとのこと、先生の胸の内を思うと耐え難い悲しみが湧き上がってくると共に、最期の瞬間まで教育者たろうとした杉山先生のお姿に深い感動を覚えております。先生がどれほど深い信頼に足る師であったか、どれほど尊敬に値する素晴らしい方であったか、そして教えてくださった全てのことや国際教養大学で先生と一緒に過ごした日々に、どんなに心から感謝をしているか、そのどれ一つお伝えすることが叶いませんでした。在りし日の溌溂としたお姿を、生涯忘れることはないでしょう。

改めて、心よりお悔やみを申し上げます。

Akiko Sugiyama Memorial

このHPは2018年7月25日にご逝去された故杉山朗子先生に捧げます。

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